横浜に図面を返しにいくがてら
卒論の時以来の横浜橋梁ウォッチング
卒論時は海側中心で見ていたので、少し裏手からまわる
さすがの横浜市。
高架橋も綺麗におさまっています、色も条例に則っているのか落ち着いた色彩です。
しかし、S字線形の橋ってなんでこんなにも美しいんだろうか。
橋の平面線形フェチとしてはたまらない曲線。
伊東さんの瞑想の森を思わせるニョッキな形態。
この病院すごく古そうなのに、すごくモダンな感じ。
施工もすごい綺麗で滑らかな曲線でした。
建築家だれか関わってるんであろうなー
そこから港の見える丘公園に向かって堀川を上る。
この川沿いには首都高速の高架橋建設に伴って代償措置として両岸の繋がりを向上させる目的でかけられた橋が何橋かあります。
そのうちの4橋、市場通り橋、前田橋、代官橋、フランス橋に橋梁デザイナーの大野美代子さんが関わられています。初期の作品ですが、非常に参考になる点の多い橋です。
卒論時からあわせると、三回目の見学。
市場通り橋
照明柱による疑似的チューブ空間を感じさせる点がユニークな橋。
幾何学の持つ完結した強いイメージ、図になり易い性質を上手くいかしたもの。
上部が高架橋ということもあり、橋梁内部空間に囲まれ感を創出すことによって豊かな歩行空間としようとする意図が読み取れます。
この手法は、シュッツトガルトのバウマン通りの歩道橋でシュライヒも採っているよう。
(下が大通り、公園と住宅地を結ぶ)
バウマン通りの歩道橋
今のところ僕はその2橋しか見たことないですが、他にも同じような手法が見られるものもあるのでしょうね。
前田橋
代官橋
この2橋も大野さん。
前田橋は勝手に色が変えられてしまっているとのことですごい色になってます。
代官橋は、大野さんらしい繊細なバラスター形式の高欄がヒューマンスケールな橋梁内部空間を創出しています。
最後が、フランス橋
国内で一番好きな 歩道橋。
僕が大野さんの橋を好きになったきっかけとなった橋です。
何度訪れてもその完成度の高さ、むしろその デザインの密度の高さに鬼畜ささえも感じます。
公園ゲート部の石張り。
乾式で 施工しているため、竣工後30年近く経つとは思えない程、綺麗です。
書き出したらとまらないので、詳しい解説はまた別の機会に。
渡河部分の曲線箱桁
こちらもエッジにゴムの水切りがついていることもあり、側面底面に汚れが少なく非常に綺麗。これも曲線の平面線形、なんで曲線の橋梁はこんなにも美しいのか。
橋脚や高欄、照明柱、舗装パターンどれをとっても手抜きのない圧巻のデザインです。
そこから電車で移動して、同じく大野さんの関わられていた陣ヶ下高架橋へ。
陣ヶ下高架橋
地面からはえてきたかのような、コンクリートの造形性を最大限に活かした橋。
高架下が渓谷公園 であることから線形をかえ、トップライトを取入れ、橋下空間のデザインに力を入れています。
桁と橋脚とを一体的に見せるように上部、下部工の一体的な設計を行い、そのテクスチャーに関しても打設時の型枠の模様を活かして、 触覚性の高いものにしている。
まるで木の様なという例えが分かり易いかもしれない。
エッジに水切りの処理をしていることもあって桁裏は非常に綺麗に保たれている。
一方で、橋上は酷い。
この地区は非常に治安が悪い様で落書きが多い。
このような問題に対して設計者はなにが出来るのか。
一度しっかりと考えなければ行けない点である、維持管理。
俺の橋ってね。笑
高欄はくの字型のバラスター形式。
橋下のコンクリートの有機的な造形との整合性があまりなく、少し違和感がある。
しかし、長く単調になりがちな高架橋歩行空間に対して、繊細で連続感のある印象をつくっている点ではよいのだろうか。
個人的にはもっとおおらかで、ざっくりしたものでも良かったような気がする。
樹木と雨の影響か高欄や遮音壁は 汚れが目立つ。
高架橋に昇降する部分。
1...2...3...4...かなりの高さをかなり無茶な方法で処理しています。
ここまでいくとかわいらしくさえ見える。
なるべく量感を減らす為にスリットが入っている点は定石。
上に、バラスターの高欄とエッジの水切りが見える。
ここからは、別の日。
大野さんの関わられた、かつしかハープ橋と大杉橋。
手前の黄色い明度と彩度が高いアーチ橋が非常に目障りでした。
土手のランニングコースからの見え
S字線形にハープ型の吊形式の斜張橋。
方向性を削除する円形の桁受を介して橋脚は河川流下方向に向けています。
この橋脚と桁との関係性の処理は非常に勉強になります。
しかし、残念ながら振動の問題があり振動制御の部材が 後から取り付けられたため少し煩雑なイメージになってしまっています。
親子塔の二塔構成で、初期は子塔の橋脚 と桁の間にも円盤があったような気がしますが、行ってみるとT字でした。 これははじめからなのかな?計画の際の図面には確かに円盤があったのだけれども。。。。
これもS字線形、美しい。
「橋の線形美」っていう写真集でもつくろうかなw
お次が一時間程歩いて、大杉橋。
とにかく 三 角形の幾何学的印象が強い橋。
行ってみるまで分かりませんでしたが、 ケーブル色は八景島駅前歩道橋とほぼ同色。
その時期にこっていたのでしょうか 。
高欄や車両防護策、舗装、ベンチ、バルコニーまでデザインの密度が非常に高い。
三角形が強過ぎて目が痛くなった、という意見もありました。
僕はそこまでではなかったですが。
照明には中島龍興さんが関わられているとのことで、もう一度行く機会があれば夜に行ってみたいです。
これまた別の日。
レンタカーを借りて、西東京へ橋梁ウォッチングへ。
コンサルの若手社会人の方お二人と一緒に見ていりました。
パシコンの伊東さん設計の鷺舞橋。
雑誌で見てから一度は見に来たいと思っていた橋。
遠景
遊水池公園の中に架かっています
遠くからみると、少しプロポーションに違和感を感じます。
近景
アンカーと橋脚?主塔などのバランスに違和感。
橋脚に桁がのっていて、吊っている感じがあまりしない。
桁には造形が加えられていますが、マッシブな感じを受けます。
内部空間の見え
内部空間はシンプルなまとめ。
斜吊特有のケーブルが創出す面が印象的でした。
構造ディテールは非常にメカニカルな印象。
桁方向にのびるパイプは何の為にあるのでしょうか?
一緒にまわったお二人
アンカーの大きさが分かります。
2.5-2.8mくらいあるのでは。
逆方向から
逆側の岸からみた外観
これがシュライヒのように確りと一面斜吊できていたらすごいかっこいいんだろうなと。
どうやら遊水池で地盤が悪いことも影響して、主塔あたりの問題が発生しているとの解説。
日本でもヨーロッパの様な軽やかな吊の歩道橋はできるのだろうか、これからに期待。
桁裏
しっかりしていて、殆ど揺れを感じませんでした。
そこから移動して多摩ニュータウンへ
多摩ニュータウンは歩車分離のラドバーン方式に多大な影響を受けており、起伏に富む地形もそれを助けて、非常に多くの橋が計画的に かけられたBRIDGE TOWNです。
有名な数橋しか今回は見れませんでしたが、 デザインヒエラルキーの管理など面的、アーバンデザイン的にも橋梁デザインの勉強ができる場所。
鶴乃橋
中央部
近くの住宅の目隠し板を兼ねた壁の構造体が立ち上がっています。
コンクリートの柔らかい素材感とエッジの金属の鋭い素材感の対比。
照明もエッジに内蔵していて非常に統一感のある橋。
外観もテクスチャーをかえることで、おいもしろいものになっています。
ラスト3橋
上谷戸大橋
橋の架かる場所は公園。
その為非常に上路アーチのアーチリブや鉛直材のデザイン密度が高い。
橋上は尖型をモチーフにした形態的統一のある空間。
舗装や高欄、照明柱、車両防護策などのピッチが不揃いで違和感があった。
これは設計者の意図とは別の場所でなってしまったのかなーと思うと非常に残念な出来上がりと感じてしまった。
昇降部の壁は、小叩き仕上げ。
ハンドレール部分だけ怪我をしないよう、滑らかなテクスチャーとしているところはさすがのディテールだなと感じた。
上谷戸大橋の近くに架かっていたコンクリート桁の曲線橋
橋脚も少し造形が気になる。
頑張ろうとしたけど、もう一つ頑張りきれなかった橋という印象でしたが、かわいらしい橋でした。
くじら橋
公園を繋ぐ橋。
クジラのような、大地に着陸した宇宙船の様な橋。
コンクリートのシェル 構造が今見ても非常に斬新でダイナミックで印象的。
スケール感が凄まじく、圧巻されました。
地面からはえでてきたかの様な橋端部。
ライトアップ用の照明も植樹で上手く収まってます。かわいいw
エッジの水切りが スカイラインを切っていて、おおらかなシェルを上手くシャープに見せています。
橋上空間
排水溝のピンコロが汚れて汚くなっていて 残念。
レールも金属ならば金属系の排水溝でも良かったのではないかという個人的な見解。
植栽がちょうどよい高さに剪定されていて、幹線道路から切り離された心地よい歩行空間になっていました。
舗装パタンは不思議な感じ。
公園の木がアイストップになる様に設計されていている。
ラストの多摩大橋。
鷺舞橋と同じ設計者さん。
遠景1
遠景2
非常に綺麗なアーチ。
平行して架かる桁橋の桁がかぶって見える為にアーチ橋なのに桁がついている様な錯覚を覚えてしまい残念な感じでした。
しかし、非常に綺麗な造形。
赤もこの場所、このスケールにはマッチングしていました。
内部空間1.2
近くで見ても、アーチリブの美しさ変わらず。
登防止用のフェンスがなかったらなお 良いなーという 感じでした。
舗装パタンや高欄も主張しすぎずで良い感じです。
惜しむべくは、照明柱と吊材の角度が不一致で煩雑なイメージであること。
また、吊材にクッション材の様なものが 巻き付けられていること。
(恐らく住民からのいらんクレームがあったのでしょう。)
総括して、
最近色々と橋を見ていてやっぱり自分の目が行く場所って細かいところなんだなーと思う。
確かに大きな構造的な枠組みの中から生まれる形態にも興味がある、構造デザイン。
でも、やっぱり渡る時に豊かな体験が出来ることが重要な橋がこれから多くなってくると思うし、大きなスケールでも小さなスケールでもおさまっている橋、建築が良いモノであると思う。
+空間デザイン
これが僕の中での一生のテーマの様な気が する。
研究もやっぱり逃げたくない。逃げられない。
そんなこんな書いていて思った次第で末筆とします。